個人再生の履行テストとは?
個人再生の手続では、再生計画案が認可されると、債務者は再生計画のとおりに債権者への弁済を行っていくことになります。
弁済を続けていける見込みがないのであれば、裁判所としては再生計画案を認可するわけにはいきません。そのため、多くの裁判所では、債務者が弁済を続けていけるかをテスト(履行テスト)したうえで、再生計画案を認可するかどうかを判断しています。
では、個人再生の履行テストとはどのようなもので、具体的にどのように行われるのでしょうか。
今回は、履行テストについて詳しく解説します。
このコラムの目次
1.履行テストとは
個人再生手続では、再生計画に従って3年から5年かけて債権者に弁済をしていくことになります。
そのような長期間にわたって返済を継続していくことが可能かどうかを、再生計画案の認可前に裁判所がきちんと見極める必要があります。
そこで、多くの裁判所では、再生計画案の認可前に、かりに再生計画が認可された場合に毎月弁済していくことになる金額と同じ金額を債務者に一定の期間積み立てさせることにより、再生計画どおりの弁済が可能かどうかをみることにしています。これが「履行テスト」です。
履行テストは、履行可能性テストや積み立てトレーニングなどと言われることもあります。
実際の再生計画に従った弁済の予行演習のようなものと考えていただければ分かりやすいのではないでしょうか。
なお、履行テストの実施は法律で定められているものではなく、裁判所の運用によるものです。
具体的な履行テストの流れや期間などは各裁判所によって異なります。
2.履行テストはどのように行われる?
では、個人再生の手続において、履行テストは実際どのように行われるのでしょうか。以下でみていきたいと思います。
(1)履行テストのタイミング
履行テストが行われるのは、個人再生の申立てがあってから再生計画案が認可されるまでの間です。
個人再生の申立てがされると、個人再生委員の選任・面談(個人再生委員が選任される場合)、開始決定、債権調査、再生計画案の作成・提出、再生計画案の決議、再生計画案の認可・不認可決定というように手続が進められますが、履行テストはこれらの手続と並行して行われます。
ただ、履行テスト開始のタイミングは申立てをした裁判所によって異なります。
後述のように、たとえば、東京地裁の場合は、第1回目の支払いは申立てをしてから1週間以内とされており、開始決定の前にスタートしますが、その他の多くの裁判所では開始決定後にスタートすることになります。
(2)履行テストの流れ
次に、履行テストの具体的な流れについてみていきましょう。
履行テストの流れは各裁判所によって細かな違いがありますが、東京地裁とその他の裁判所では大きく異なるため、分けて解説していきます。
①東京地裁の場合
東京地裁の場合、個人再生の申立てをすると必ず個人再生委員が選任されます。
個人再生委員から振込先口座についての連絡があるので、申立てから1週間以内に指定された口座に1回目の振込みをすることになります。
1回の振込金額は、再生計画において支払うことになるであろうと想定される1月分の弁済金額です。
個人再生委員は、1回目の振込みがされたことを確認したうえで、3週間以内に裁判所に開始決定に関する意見書を提出し、この意見書をもとに裁判所が開始決定をするかどうかを判断します。
ですから、もし1回目の振込みができなかったりすると、開始決定を出してもらえず、申立てが棄却されてしまう可能性がありますから、注意しましょう。
履行テストの期間ですが、東京地裁の場合は原則6か月間です。その間、毎月定められた金額を積み立てていくことになります。
②その他の裁判所の場合
東京地裁以外の裁判所(横浜、さいたま、千葉など)の場合は、弁護士が申立代理人になっていれば個人再生委員が選任されないケースがほとんどです(個人再生委員が選任されるケースもあります。)。
そのため、申立人自身の口座や代理人弁護士の預り金口座に積み立てをすることによって履行テストを行っていくことになります。
履行テストの開始は、通常は開始決定後で、毎月決まった金額を原則として3~6か月の間積み立てていくことになります。
履行テストの結果は、再生計画案を提出する際に裁判所に報告します。
(3)積み立てたお金はどうなる?
では、履行テストによって積み立てたお金はどうなるのでしょうか。
これも東京地裁とその他の裁判所で大きく異なってきますので、それぞれ解説いたします。
①東京地裁の場合
東京地裁の場合、履行テストで積み立てたお金は「分割予納金」となります。
予納金は申立時に裁判所に納めることが多いのですが、履行テストを兼ねて分割で納めるということになります。そして、積み立てた分割予納金は、まず個人再生委員の報酬に充てられます。
東京地裁の場合、申立代理人弁護士がついているケースでは個人再生の報酬は15万円ですので、積み立てた分割予納金のうち15万円が個人再生委員の報酬となり、差額があればそれは申立人(申立代理人弁護士)に返金されます。
②その他の裁判所の場合
東京地裁以外の裁判所の場合、積み立てたお金は分割予納金として扱われることにはなりません。
上でご説明したように、申立人自身の口座や代理人弁護士の預り金口座に積み立てをすることになり、もともと申立人側の管理下にありますから、履行テストが無事に終了すれば申立人の手元に残ります。
積み立てたお金は、再生計画認可後の弁済に充てたり、弁護士費用の支払いに充てたりすることが多いでしょう。
3.履行テストがクリアできないとどうなる?
では、もし履行テストをクリアすることができなかった場合はどうなるのでしょうか。
最初にご説明したとおり、履行テストは、再生計画に従った弁済を継続していけるかどうかを裁判所がみるために実施するものです。
ですから、履行テストをクリアできなかった場合には、継続して弁済していくことが可能という要件を満たさないとして、再生計画が不認可となってしまう可能性が高いでしょう。
4.個人再生は弁護士に相談を
今回は、履行テストがどのようなもので、実際にどう行われるかといった点につき解説しました。
個人再生をご検討中の方、個人再生をした場合に実際に毎月いくらくらい弁済していくことになるのか知りたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度泉総合法律事務所にご相談ください。
当事務所では、個人再生をはじめ債務整理のご相談は何度でも無料でお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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