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過払い金返還請求の期間に関わる注意点

過払い金返還請求の期間に関わる注意点

過払い金返還請求において、過払い金が実際に返還されるまでの期間は、請求相手の貸金業者がどこであるか、どれだけ貸金業者と争うか次第で、大きく異なります。

違法なグレーゾーン金利で利息を取っていた貸金業者が悪いのだから、当然にすぐに全額を返還してもらえるはずだというお気持ちもわかります。

しかしながら、現実は理屈通りになるとは限らないのです。ここでは、過払い金返還請求に必要な期間に関わる注意点について説明します。

1.一般的な過払い金返還請求の期間

一般的な過払い金返還請求の期間は、貸金業者と裁判所を通さずに交渉する段階で終わった場合には、半年前後かかります。交渉がうまくいかず、裁判をする場合には、1年以上かかることもあります。

過払い金返還請求の流れを説明しつつ、各段階でかかる時間を説明します。

(1)準備期間 取引履歴の開示と過払い金の計算(約2か月)

準備期間には、約2か月、早くても1か月はかかります。

まず貸金業者に対して、取引履歴を開示するよう要求します。取引履歴とは、貸金業者との借金やその返済の経過を記録した、貸金業者の内部資料のことです。

貸金業者が開始した取引履歴をもとに、違法とされたグレーゾーン金利ではなく、合法的な上限金利で利息を支払った場合の利息を計算し、実際に支払った利息の差額である過払い金の金額を算出します。これを引き直し計算と呼びます。

取引履歴の開示と引き直し計算は、過払い金返還請求のために必要な準備です。
この準備のための期間が、2か月ほどかかることになります。

(2)貸金業者に対する返還交渉(約2か月から6か月)

過払い金が計算出来たら、次は貸金業者に対して過払い金の返還を要求します。業者の提示額に対して、依頼者がOKを出せば、そこで過払い金返還が決まります。

もっとも、裁判所を通さない交渉であるため、ほとんどの貸金業者は、全額を支払うことはありません。

また、過払い金の利息についても、交渉段階で支払われることは、業者にもよりますが、非常に稀です。

さらに、すぐに返還する場合には元本の5割しか返還しないが、半年待ってくれれば7割返還するというように、支払を遅らせるような提案をしてくる業者もいます。

あげく、交渉がまとまってもすぐに支払いをせず、先延ばしを図る業者すらいることに注意が必要です。

(3)貸金業者に対する返還のための裁判(約3か月~1年以上)

貸金業者との交渉結果に満足がいかないようであれば、裁判による請求も検討します。

裁判にかかる期間ですが、裁判所で主張を戦わせる「期日」が開かれるペースは基本的に1か月に1回ですので、「こちらの主張→貸金業者の主張→判決」という最短ペースでも3か月かかることになります。貸金業者が徹底抗戦の構えであれば、裁判だけで1年以上かかってしまうこともあります。

一方、貸金業者としても、弁護士費用が生じることを嫌って、裁判になってからより高額の返金額を提示してくることもあります。

まとめれば、一般的には半年前後で過払い金が返ってきますが、業者の態度や裁判の状況次第では、1、2年かかってしまうこともあり得るわけです。

次に、どのような場合に、過払い金返還請求の期間が長くなってしまうのかを、より具体的に説明します。

2.過払い金返還請求の期間が長くなりやすい場合

端的に言えば、業者が強硬かどうか、事案に問題があるかどうか、少しでも高額の過払い金が戻ってくる可能性を追い求めるかどうかにより、過払い金返還請求が長期化するかが決まります。

(1)貸金業者が強硬な場合

交渉で十分な金額を貸金業者が支払うのであれば、わざわざ裁判をして過払い金を取り戻す必要性は少なくなりますから、かかる期間は短くなります。

しかし、過払い金返還請求は、貸金業者にとって非常に大きなダメージを長年与え続けています。

中小貸金業者は焼け野原状態となり、大手でも武富士は倒産し、また、次々とメガバンクの傘下に入り生き延びるようになりました。メガバンクの傘下に入り、資金的に余裕ができた貸金業者は、比較的、交渉段階でも応じやすい高額の返還額を提示してくる傾向にあります。

一方、銀行の傘下に入らず独立のまま経営を続けている貸金業者は、財政的基盤がいまだ不安定です。そのため、過払い金返還によるダメージを抑えるために、交渉では半分程度の返金にしか応じません。

裁判で勝訴すれば、当然、全額を支払いますが、それを避けるために、徹底して争ってくることが珍しくありません。

(2)貸金業者が反論できる事情がある場合

10年以上前にいったん借金を完済している場合、返済が滞ったことがある場合、借金減額の代わりに過払い金を要求しないという和解をした場合など、貸金業者が過払い金返還請求を拒否できる理由となる事情がある場合には、穏健な銀行傘下の業者でも、交渉で提示してくる返金額が一気に下がりがちです。

もし過払い金全額を手に入れたいならば、裁判で貸金業者と徹底的に争う必要が生じます。

特に多いケースが、10年以上前にいったん借金を完済している場合です。

過払い金は、取引が完了してから10年経過すると、消滅時効制度により、請求ができなくなってしまいます。そして、貸金業者からの借金を10年以上前に一度完済したことがあると、貸金業者はその時点で取引はいったん完了したのだから、それ以前の過払い金は消滅時効により請求できないと反論してきます。

2018年現在、過払い金が発生していたころからすでに10年が経過してしまっていますから、貸金業者の反論が裁判所により認められてしまうと、過払い金を一切請求できなくなる危険性があります。

もっとも、完済後に、借金を再開した時までの期間が短ければ、取引は続いていたと扱われますので、まだ過払い金の請求が認められる余地は十分にあります。

しかし、裁判が必要になりますから、時間がかかる覚悟は必要となります。

(3)より多くのお金を貸金業者から取り返したい場合

最初の一般的な流れの中で説明したとおり、ほとんどの業者は、交渉段階では過払い金元本の全額返還請求には応じません。そのため過払い金を少しでも多く、出来れば全額返還請求したいという希望がある場合には、裁判により時間をかけて請求をすることになります。

また、利息を請求するにも、裁判をしなければなりません。過払い金が発生した時から、過払い金について年5%の利息が、本来は上乗せされています。

しかし、交渉では、この利息は支払われることはまずありません。

そこで裁判所により、過払い金だけでなく過払い金の利息についても、支払うよう命じてもらう必要があります。

発生した時から年5%の利息は、莫大なものです。裁判により支払うことになる利息の計算方法は、元本×5%×利息発生日~利息支払日の間の期間となるからです。

特に、過払い金の場合、2018年現在では発生してから10年以上たっていますから、利息は元本の50%以上になります。

単純に考えて、裁判で過払い金の支払いが認められた場合、戻ってくる過払い金は、支払いすぎた利息の1.5倍以上になる可能性があるわけです。

(4)業者が取引履歴を開示しない場合

最近はここまでしてくる強硬な中小貸金業者は、多くが倒産してしまっていますが、時折、取引履歴をすでに捨ててしまったといって開示してこない貸金業者もいます。

たいていの場合は、実際には保管してあるのに、過払い金を請求されたくないために嫌がらせをしているだけです。

そこでとりあえずの過払い金の計算をして、裁判をする必要が生じます。

裁判の中で、裁判所に業者に対して取引履歴を開示するよう促してもらえます。それでも、貸金業者が取引履歴を開示しなければ、文書提出命令という制度を使って、貸金業者に圧力をかけることができます。

3.請求期間が長くなることによるデメリット

過払い金の請求期間が長くなってしまった場合、特に裁判によって過払い金を返還請求する場合には、デメリットもあります。

(1)貸金業者が倒産してしまい、過払い金を回収できなくなるリスクが高くなる

特に中小貸金業者は、過払い金返還請求が本格化して10年たった今でも、倒産が相次いでいます

返還請求相手の貸金業者が倒産してしまうと、戻ってくる過払い金は、本来の1~10%程度にまで減ってしまいます。

時間をかけた結果、かえって過払い金をほとんど回収できなくなり、半分程度でもよいから、さっさと回収しておけばよかったと後悔することになるリスクが無いわけではありません。

(2)裁判をすると、弁護士費用が高くなる場合がある

過払い金返還請求の一般的な弁護士費用の相場は、交渉だけであれば、返還額の20%です。

ところが、裁判となると、その分、手間が増えてしまいますから、一般的な相場としては、報酬の割合が、25%前後に上昇してしまいます。

裁判をしても、必ず過払い金元本全額と利息が支払われるとは限りません。取引の中断が認められたり、敗訴のリスクが高くなったため、貸金業者の当所の言い値で和解せざるを得なかったりする場合もあります。

その様な場合には、時間がよりかかっただけで、交渉段階での返還額と金額が変わらなくなってしまうことや、最悪、弁護士費用の上昇により、交渉段階で止めた場合よりも、手元に入ってくるお金が少なくなってしまうこともあり得ます。

なお、泉総合法律事務所では、交渉であろうと裁判であろうと、過払い金返還請求にかかった時間に関わらず、報酬は返還額の20%となっています。

4.過払い金返還請求は弁護士に相談を

過払い金返還請求では、ありていに言ってしまえば、請求にかかった期間が長くなるほど、返還額が高額になる可能性が高くなります。

しかし、裁判で負けてしまったり、貸金業者が倒産したりしてしまえば、時間がかかったにもかかわらず、逆に過払い金の返還額が一気に減少してしまう恐れがあります。

低い金額でも早期解決をすべきか、それとも、できる限り多くの過払い金を手に入れるために、長期戦を覚悟すべきかの判断をするためには、専門的知識を持った経験豊富な弁護士の助言が不可欠となります。

泉総合法律事務所は、これまで多数の過払い金返還請求について、任意交渉及び裁判双方の豊富な取扱い経験がございます。

裁判などにより請求が長期化しても、弁護士費用は変わりません。相談も無料となっておりますので、是非、お気軽にご相談ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-424-202 平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
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