個人再生が出来ない人とは?|手続きのための条件
個人再生は、借金を大きく減らせる債務整理です。
借金の一部は返済しなければなりませんが、それでも返済額自体が大幅に少なくなるため、生活が一気に楽になります。
ただし、個人再生は誰にでも利用できるものではありません。一定の条件を満たした人でないと、個人再生を始めることすら叶わないのです。
それでは、いったいどのような人が個人再生をできるのでしょうか?
ここでは、個人再生できる人の条件を述べていきます。
自分は個人再生できるのか?または個人再生以外の債務整理をしなければならないのか?気になる方はぜひお読みください。
このコラムの目次
1.そもそも個人再生とは
個人再生とは、自分の借金を5分の4程度カットして、残った借金については原則3年程度かけて毎月返済していく債務整理方法です。
任意整理よりも借金の減額効果が高く、自己破産のように自分の財産を処分する必要が原則的にない等のメリットがあります。
また、通常債務整理を行うと住宅ローン支払中の持ち家は抵当権を実行されるか競売にかけられる等して処分されてしまいますが、個人再生では「住宅ローン特則」という制度を利用することで持ち家を手元に残すことができます。
住宅ローン特則を使った場合は住宅ローンについては減額されないため、従来通りの支払いを続けなければなりませんが、住宅ローン以外の借金は減額されますし、大切なマイホームを残すことができるので非常に役に立つ制度といえます。
一方で、個人再生をするには様々な難しい書類を準備しなければならず、間違いがあったり要件を満たさなかったりすると、最悪の場合手続が打ち切られる可能性すらあります。
法律の知識のない一個人が個人再生を自力で行うのは非常に難しいので、専門家である弁護士に依頼することを強くおすすめします。
2.個人再生をするための条件
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
一部は共通しているものの、それぞれ利用できる条件が異なるので確認していきましょう。
(1) 共通の条件
まずは、小規模個人再生と給与所得者等再生に共通している条件を紹介します。
- 個人再生の申立人(債務者)が個人であること
- 将来的に借金の支払いが不可能になる可能性があること
- 住宅ローンを除いた債務総額が5,000万円以下であること
- 申立人に将来にわたって継続的にまたは反復した収入を得る見込みがあること
まず、個人再生は個人を対象としているので、法人等は利用できません。
そして、個人再生は借金を返せそうにない人への救済措置的な意味合いもあるため、多額の借金を抱えていても、将来的に返済できそうな人は個人再生の対象外となっています。
3番目の債務総額についてですが、住宅ローン特則を使う場合は「住宅ローンの残額を除いた債務」が5,000万円以下であることとされています。
住宅ローンの残額を除いた借金の額が5,000万円を超える人は自己破産等を検討しましょう。
最後の「継続的にまたは反復した収入」については、会社員や公務員はもちろん、アルバイトやパートといった非正規雇用労働者でも可とされています。
ただし、将来にわたって長期的な雇用がある等の前提が必要であり、単発のアルバイトを繰り返しているような場合は個人再生の条件を満たさないと判断されることが多いです。
年金生活者の場合、老齢を理由とした年金については継続的で反復的と認められますが、障害を理由にした年金の場合はケースごとに判断されます。
将来的に障害が治って年金の支給を受けられなくなる可能性があるからです。
自営業者については収入が安定しない場合がありますが、少なくとも3ヶ月に1回は個人再生後の弁済が可能な程度の収入があれば問題ないとされています。
(2) 小規模個人再生に特有の条件
小規模個人再生にあって給与所得者等再生にない条件は1つです。
債権者の消極的な同意があること
これは「債権者の過半数が反対していないこと」と読み替えるとわかりやすいでしょう。
個人再生手続の中には、裁判所が各債権者に債権の調査等を行うプロセスがあります。
もし債権者の過半数から反対票が集まった場合、個人再生を認めてもらうことはできません。次に説明する給与所得者等再生か、自己破産等他の債務整理を検討してください。
なお、この決議は書面で行われます。
債権者が裁判所に集まって申立人の前で厳しく反対意見を言い合うようなことはないので、ご安心ください。
(3) 給与所得者等再生に特有の条件
給与所得者等再生には、共通条件に以下3つの条件が追加されます。
- 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること
- 定期的な収入の変動幅が少ないこと
- 過去に給与所得者等再生、ハードシップ免責、自己破産をしたことがある人は、それから7年以上経過していること
収入の変動幅については、過去2年間にわたって増減幅が20%以内であれば良いとされています。
いきなり収入が極端に下がった、もしくは極端に上がったという人は、給与所得者等再生を利用できない可能性があるのでご注意ください。
次の「給与所得者等再生、ハードシップ免責、自己破産」については、それらの認可決定や許可決定を受け、それが確定したときから7年経過しているかどうかで判断されます。
これらの措置は借金を免除もしくは減免するものであり、債権者の利益を大きく害します。
そういったものを頻繁に利用されては債権者の権利が損なわれてしまいますし、債務者側も「借金しても債務整理すればいい」と安易に考えて、真面目に生活再建に取り組まないかもしれません。
頻繁な利用を避けるために、7年という期限が設けられていると考えてください。
「ハードシップ免責」とは、個人再生を認められた人がその後リストラや病気または怪我等自己の責によらない理由で返済不能に陥った場合に、それ以降の支払いを免除するという制度です。
ハードシップ免責が認められるには、すでに弁済総額の4分の3以上支払っていることや、支払期間を延長しても支払える見込みがない等の要件が必要です。
3.小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを選ぶべき?
それぞれ条件を述べてきましたが、小規模個人再生と給与所得者等再生にはもう1つ大きな違いがあります。
それは、個人再生後の弁済額です。
給与所得者等再生は小規模個人再生に比べて弁済額が高くなる傾向があります。
これは小規模個人再生の弁済額が「個人再生で定められた最低弁済額」か「自己破産したと仮定したときの配当以上の金額」のうちどちらか高い方と定められているのに対して、給与所得者等再生ではこの2つに「法定可処分所得2年分」を加えた3つのうち最も高い金額という決まりがあるからです。
この「法定可処分所得2年分」という条件によって、場合によっては弁済額が100万円以上上がる可能性もあります。
このため、基本的には弁済額の少ない小規模個人再生を選択し、債権者の反対等で小規模個人再生が不可能となった場合は給与所得者等再生に切り替えるような選択をするのが良いでしょう。
4.個人再生のことなら弁護士へご相談ください
個人再生ができるかどうかの判断は、最終的には弁護士に相談するのが一番です。
弁護士ならば、個々のケースによった見通しを立ててくれますし、場合によっては個人再生以外の債務整理で最も効率が良い方法を提案してくれるかもしれません。
また、個人再生は手続も複雑なため、弁護士に依頼して手続きを代行してもらった方が効果的です。
自分で行おうとするとかなりの手間と時間がかかりますし、失敗する可能性も高くなります。
確実に個人再生を成功に導いて借金生活から別れを告げるためにも、個人再生でお悩みの方は泉総合法律事務所の弁護士へぜひご相談ください。
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