個人再生をするとローンが残っている車はどうなる?
個人再生をすると、「ローンが残っている車はどうなるのか」が気になる方も多いでしょう。
仕事で使っている、育児や介護でどうしても車が必要であるという方は、できるだけ車を残す方向で考えたいでしょう。
個人再生では、必ずしも車が没収されてしまうということはありません。手続きを行う場合は、車のローンが残っている場合とローンを完済している場合で対応が異なります。
今回は、個人再生と処分すべき財産の関係と、個人再生で車がどうなるのか、手元に残す方法があるのかという点についてご説明します。
このコラムの目次
1.個人再生と財産の関係
個人再生とは、裁判所に再生計画を提出し認可されることにより最大1/5まで借金を減額することができる債務整理の方法です。
自己破産のように全額免除は叶いませんが、場合によっては持ち家を残すことができ、車を処分せずに済むこともあるため、財産処分を少なくできるという利点があります。
これに対して自己破産では、生活できる最低限のお金以外はすべて没収され、換価処分し、債権者に平等分配されます。
「必ずしも財産を処分しなくて良い」という点から、個人再生は自己破産よりも債務者の負担が少ない債務整理の方法といえるでしょう。
もっとも、個人再生の「清算価値保障原則」から、手持ちの財産を処分すべき必要性も生じます。
これは、借金を大幅に減額する代わりに、残した資産や財産以上の金額を弁済しなければいけないとするものです。
例えば、500万円の借金があり、200万円免除してもらうことになったとします。この場合、返済の必要がある300万円と同等の価値の財産までは手元に残すことができます。
個人再生では、原則3年で返済できる金額を考えなくてはいけません。計算した結果、返済できる金額が少ないと判断された場合は、清算価値保証の原則から手持ちの資産は少なくしなければいけないのです。
2.車のローンの残債が残っている場合
次に、車を残せるのかについてご説明します。まずは、カーローンが残っている場合にどうなるのかを見ていきましょう。
(1) 所有権留保特約があれば引き上げられてしまう
車のローンがまだ残っている場合、契約上はまだあなたに車の所有権がない可能性があります。
というのも、車のローンの多くでは、所有権留保特約が付されているためです。
所有権留保特約とは、車のローンを支払い終えるまで、ローン会社が所有権を有すること示す契約です。購入者は所有権者のように車を家に持ち帰り毎日利用することができますが、実際の所有者はローン会社となるのです。
所有権留保特約では、ローンを支払えなかった場合には車を引き上げ、売り払うなどによって残債務を取り返すことができるようになっています。
個人再生を行う場合は、返済ができないケースと判断されるため、所有権留保特約があれば車は引き上げられてしまいます。
所有権留保特約が組まれているかは、契約書か車検証にて確認することが可能です。特に、トヨタファイナンスなど車を購入したメーカーの提携するローン会社の場合は、所有権留保特約が付いていることが多く、個人再生をすると車が引き上げられてしまいます。
銀行や信用金庫にてローンを組んでいる場合は、まれに所有権留保特約がつかないこともあるようです。
(2) 車を残すための対応策
所有権留保特約が付いている場合でも、車を残す方法はあります。一般的な対処法としては以下の2つとなります。
- 第三者弁済
- 別除権協定を裁判所に認めてもらう
まず、第三者弁済とは、本人以外の家族・親族・友人などに車のローンを返済してもらうことを指します。ご家族に一括返済してもらうことで、車を貸してもらい使用を続けるという方法となります。
この場合、同居の家族が弁済すると問題となりますので、別世帯の家族である親や兄弟などにお願いするようにしましょう。
もっとも、将来的に「お金を返して欲しい」などのトラブルになることもあるため、第三者弁済をお願いするときは関係悪化などに注意が必要です。
次に、別除権協定という方法です。車のローン会社と「ローンを返済することを約束するので引き上げをしないでほしい」という約束を交わすことを指します。
もっとも、この方法を実行するためには裁判所の許可が必要です。別除権協定は、債権者間の平等を害する結果となる可能性があるため、例外的なケースの場合のみ認められています。
具体的には、タクシーの運転手や運送業などの職種の場合など、車がないと収入が得られないというケースです。
債権者は残りの債務を弁済してほしいので、職を奪ってしまうと今後の収入がなくなり余計に困ってしまいます。それを防ぐためなら、車を残すのも仕方ないという発想です。
しかし、これは、例外的なケースのため、裁判所に認めてもらうのはハードルが高いと考えておくべきです。
ご自身が車のローンだけを先に返済するという方法も思い浮かぶかもしれませんが、これは債権者間の平等に反する「偏頗弁済」にあたるため禁止されています。
これが発覚すると個人再生が認められなくなってしまうため、個人再生直前に車のローンだけ先に返済するということはやめましょう。
3.車のローンを完済している場合
次に、車のローンは完済している場合を見ていきましょう。
(1) 原則として車を処分する必要はない
まず、車のローンを完済している場合は、車がローン会社に引き上げられることはありません。所有権留保特約が付いていたとしても、ローンを完済した時点で所有権は購入者に移っているためです。
また、車を処分する必要があるのかという点についても、原則として処分する必要はありません。
先にお話しした通り、個人再生は必ずしも財産を処分する必要はないためです。
車のローンを支払い終わっている場合は、車を手元に残せる可能性は大きく上がると言えるでしょう。
(2) 車を処分すべきケースもある
もっとも、必ずしも車を手元に残すべきかというとそうではありません。場合によっては、処分すべきケースもあります。
それは、車を手元に残すことで支払いきれない弁済額が残ってしまう場合です。
先にご説明した清算価値保証原則を思い出してください。
車の価値は一般的に大きいと考えられています。個人再生の場合、所有する車に100万円の価値があれば、100万以上の返済をしなければいけないことになります。
手元に残す財産は車だけではありません。その他にも、預金や保険など、資産の種類は様々です。
手元に残す資産すべてを考慮しない計算しないと、せっかく個人再生の手続きをしても減額幅が少なくなってしまうのです。
個人再生の手続きでは、資産があるのに支払わないのは不公平と考えます。そのため、数年で完済できる限度を考え、手持ちの資産を減らす必要があるのです。
車があることで返済が大幅に増えるようであれば、車の処分も検討すべきということです。
このように、場合によっては、車を処分すべきケースもあります。車を処分するかどうかの判断に関しては、収入などの個別具体的な情報が必要になるため、不安がある場合は弁護士に相談すべきです。
4.個人再生で車を残したい場合は弁護士にご相談を
個人再生で車を手元に残したい場合は、車のローンが残っているかどうかによって対応方法が異なります。
個人再生の場合、今後の返済計画とも関係してくるため、一度専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
泉総合法律事務所では、個人再生に関する案件に数多く携わっており、経験と知識が豊富な弁護士が最適な方法に導いています。
個人再生に関して分からないことがあれば、泉総合法律事務所の弁護士にお気軽にお問い合わせください。一緒に借金返済の最適な方法を考えましょう。
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