追突事故に遭ったら痛くなくても病院に行くべき?
追突事故は、交通事故の中で最も多い事故といわれています。
後ろからの軽い衝突だった場合は、怪我もなく物損事故扱いで終わらせることもありますが、後になって首や肩や腰に痛みが発生してしまうということもよくあります。
追突事故の場合、痛くなくても事故後できるだけ早く病院へ行くべきです。
今回は、追突事故でよくある怪我や、すぐに病院に行くべき理由、示談後に症状が現れた場合の対処法についてご説明します。
このコラムの目次
1.追突事故による怪我の特徴
(1) 追突事故はむち打ちになりやすい
追突事故は、前方車両が走行中または停止中に、後方車が後ろからぶつかってくることによる事故です。日本の交通事故の中ではかなり多い事故態様といわれています。
追突事故では、たとえ軽い衝突であったとしても後ろからの衝撃が大きく、首への負担が大きくかかります。そのため、むち打ち症になりやすいといわれているのです。
むち打ちとは、交通事故などの後ろからの強い衝撃により首が大きくしなることにより、首の筋肉や神経を損傷する怪我をさします。正式な診断名としては「頚椎捻挫」と言います。
症状としては、首や肩や腰、腕の痛み・しびれという代表的なものから、吐き気やめまい、耳鳴りなど多種多様です。
血を流す怪我や骨折のように外から見てわかる怪我ではないため、軽い交通事故では見逃されがちな怪我といえます。
むち打ちは軽い怪我と考えられていますが、実際上はなかなか完治しないこともあり、、後遺症に悩まされる人も少なくありません。
交通事故の際、一瞬でも変な方向に首が曲がった、大きくしなった、違和感があったという場合は、むち打ちの可能性がありますので、痛みがなくてもすぐに病院に行くべきです。
(2) 痛みはすぐに発生しないことも多い
とは言っても「痛みもないのに病院に行くのはやりすぎでは?」と考える方も多いでしょう。
また、仕事などが忙しく、すぐに病院に行く余裕なんてないという方もいらっしゃるかと思います。
しかし、むち打ちは事故直後、すぐに痛みが発生しないことも多いのです。
事故直後は特に痛みを感じなかったのに、その日の夜に家に帰ってから首が痛み出すということはよくあります。
事故直後は強い衝撃により身体は興奮状態にあります。このとき、痛みを感じないことは良くあるのです。
その日の夜や翌日、数日たってから痛みがひどくなるというケースは、交通事故では良くあることのため、痛みを基準として病院に行く・行かないを決めるのはおすすめできません。
痛みがなくても交通事故の衝撃により身体のどこかに異常が出ている可能性はあるため、念のため病院でレントゲン撮影をするなどの検査を受けることが大切です。
(3) むち打ち以外にも重篤な怪我が潜むケース
事故直後に痛みを感じない怪我で、重篤な怪我を負っているケースも稀にあります。
例えば、脳内出血を起こしている場合です。後ろからの衝撃で頭を打ったというケースの場合、脳内出血を起こしているケースがあります。
軽く頭を打っただけと考えていても、脳には痛みを感じないため、血液が脳内に溜まって脳を圧迫するまでに時間が経過してしまいます。
脳内出血などを起こしてしまった場合は、頭痛や吐き気、嘔吐、手足のしびれなどを感じることがあります。このような症状が出てきた場合はすぐに病院に行くべきです。もちろん症状が出ていなくても、頭を打ったのであれば必ず通院し、CT撮影などの検査をするべきです。
重症となると、意識障害を引き起こすことや、後遺障害が残ってしまうこともあります。
このように、交通事故後すぐに痛みを感じない場合でも、大きな怪我を負っている場合があります。交通事故にあったら、病院で診察を受け適切な検査を受けるようにしましょう。
2.追突事故で痛くなくても病院に行くべき理由
痛みがない場合でも、後に怪我があったことが発覚することがあります。
この場合、病院に行っていなかったことで、その後の損害賠償請求などで問題が発生することがあります。
(1) 痛くなくても病院に行くべき理由
「何となく身体に違和感があるけど忙しいからまた今度病院に行こう」
現代の忙しい社会人はこのように考えるかもしれません。
しかし、交通事故では事故直後に病院に行くことをおすすめしています。
その理由としては以下の通りです。
- 治療が遅れると後遺症が残ってしまうこともある
- 事故と怪我の因果関係が否定される可能性がある
- 治療費の請求などがしっかりと受けられない可能性がある
- 診断書がないと人身事故として警察が処理してくれない
痛みがなくても怪我をしている場合、治療が遅れると後遺障害が残り、将来にまで影響を残してしまう可能性も考えられます。
そして、事故後病院にいくのが遅れてしまった場合は、事故のせいで怪我を負ったのにもかかわらず、事故との因果関係が否定されてしまうことがあります。
つまり通院するのが遅れれば遅れるほど「その怪我(症状)は事故と関係がないのでは?事故以外のほかの原因があるのでは?」という推測が働き、事故との因果関係が否定されてしまいます。
そうすると、治療費や慰謝料が減額されてしまう、受け取れなくなってしまうなどの不利益を被る可能性が出てきます。
さらに、病院の診断書がないと、物損事故の扱いとなり損害賠償が原則として請求できません。人身事故に切り替えるためには病院の医師に診断書を書いてもらう必要があります。
このように、病院に行かないことでさまざまな不利益が発生しやすい状況となります。最悪の事態を考えて、最良の行動に出ることが大切です。
(2) 後で痛みが出てきた場合のベストな対処法
交通事故後すぐに病院にはいかなかったけれど、数日経って痛みが発生した場合にはどのように対応するべきなのでしょうか?
痛みが発生した場合は、以下の通りに対応するのがベストです。
- 病院で診察をし、検査を受け、診断書を得る(できれば事故から2〜3日以内)
- 必ず整形外科へ行くこと
- 痛みが続く限りは定期的に通院すること(少なくとも2週間に1回は通院)
- 医師としっかりコミュニケーションを取ること(自覚症状を正確に伝える等)
痛みは我慢しないで、できるだけ早く病院に行って診察を受けましょう。事故との因果関係が否定されないためにも、2~3日以内には診察を受ける方が良いといえます。
この期間が過ぎた場合でも、必ず病院に行ってください。病院は整形外科を選びましょう。
医師に内緒で「整骨院に通う」方がいらっしゃいますが、これはNGです。
整骨院は医療機関ではないため、通う場合は医師の許可を得ないと治療費として認定されないことがあるからです。また、整骨院では診断書も書いてもらえません。
整形外科では、医師による診察、検査を受けて、診断書を書いてもらってください。
このとき、「交通事故による怪我」であることを必ず記載してもらってください。
また、通院が必要な場合は痛みがなくなるまで定期的に通院を続けるようにしてください。忙しいことを理由に病院にあまり通わないと、入通院慰謝料額が下がってしまうことがあります。
定期的に通い、医師に現在の症状をしっかりと伝えることが大切です。
[参考記事]
追突事故でむち打ちになった場合の対処法
3.示談後に症状が現れたら
交通事故で示談は行ったものの、事故から数ヶ月経ったあとに別の症状が発生するなどの問題が起きることがあります。この場合、示談の再交渉を行うことはできるのでしょうか。
原則として、示談交渉は一度成立したら覆すことはできません。示談交渉は、事故に関するあらゆる損害について話し合い、当事者間で納得のいく適正な金額で合意するものです。
任意保険会社とやりとりをした上で示談を成立させた場合、正式な法的文書となるため、これを簡単に覆すことはできないのです。
もっとも、先にご説明したように示談時とは別の症状が発生する事例は、実際に起きています。この場合、示談書に「後遺障害が発生した場合には別途協議する」という条項を入れ、裁判では「示談時に予想できなかった症状についてのみ」新たに請求することができる場合もあります。
すべての症状について再交渉が可能なわけではありませんが、示談成立時に予見不可能だった症状については後遺障害や慰謝料請求の可能性は残ります。
しかし、加害者側は「示談は成立している」として再交渉を拒否することも十分に考えられますので、この場合は弁護士が必要です。
以上から、新たに症状が発生した場合などは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
4.交通事故のトラブルは弁護士に相談を
病院に行くのが遅れたことで治療費や慰謝料の額に影響が出てしまうことがあります。このとき、納得できない場合は弁護士に相談しましょう。
交通事故を多く取り扱う法律事務所に相談すれば、納得できる解決策を提案してくれるでしょう。
交通事故に関するトラブルは、ぜひ泉総合法律事務所にご相談ください。
泉総合法律事務所では、交通事故案件を多く取り扱い、被害者と任意保険会社間の交渉トラブルも円満解決に導いています。面倒な交渉はすべて弁護士に任せられるため、被害者は治療やリハビリに専念していただけます。
何か困ったことがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
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