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自己破産で財産隠しをしたらどうなる?

自己破産で財産隠しをしたらどうなる?

自己破産をすると、手元に残せる一部の財産を除いて、全ての財産を失うことになります。そのため、中には、「手元にできるだけ多くの財産を残したい」と考えて、裁判所に財産を申告しなかったり、少なく申告したりするなどして、財産隠しをする人もいます。

しかし、自己破産の手続において財産隠しをしても発覚する可能性が高いですし、発覚した場合には深刻な事態が生じかねません。

以下では、どのような行為が財産隠しとなるのか産隠しをした場合どのような事態になるのかなどについて解説します。

1.財産隠しとは?

自己破産をするにあたって「財産隠しをしてはいけない」ということを聞いたことがある方は多いと思うのですが、どのような行為が財産隠しにあたるのかについて具体的なイメージがわかないという方もいると思います。

財産隠しの方法はいろいろありますが、よく行われるパターンとして以下のようなものがあります。

(1) 申立書類に虚偽の記載をする

自己破産の申立ての際には、資産目録という財産のリストを作成して提出する必要があります。

その際に、残高がある預金口座を申告しなかったり、自動車を所有しているのに所有していないと申告したり、解約返戻金のある生命保険などに加入しているのにそのことを申告しなかったりすれば、財産隠しとなります。

(2) 財産を他人名義に変更する

自己破産直前に自己の財産を他人名義に変更することは、財産隠しにあたります。

たとえば、不動産や自動車、保険の契約者の名義を親族や友人の名義に変更したり、預金を引き出して親族名義の口座に移したりすることなどがこれにあたります。

(3) 偽装離婚をして財産分与をする

離婚をする場合、財産があれば財産分与として(元)配偶者に財産を分けることになります。

この財産分与を利用するために、偽装離婚をして、自分の財産を(元)配偶者に渡してから自己破産をするケースがありますが、このような行為は財産隠しとみなされます。

2.財産隠しはバレる!

「財産隠しがいけないことだとしても、バレなければいいんじゃない?」と考える人もいるかもしれません。

ですが、そのような考えは絶対にもたないでください。財産隠しが発覚した場合のデメリットは非常に大きいですし、なにより、財産隠しは発覚する可能性が高いからです。

以下、どのようにして財産隠しが発覚するかにつき説明します。

(1) 提出資料から発覚

自己破産手続においては、申立書とともに様々な資料を裁判所に提出することになります。

提出した資料は裁判所や破産管財人が調査をすることになりますが、そこから財産隠しが発覚することが少なくありません。

提出が求められる主な資料としては、以下のようなものがあります(以下のものに限りません)。

  • 金融機関の預貯金の通帳や取引履歴
  • 給与明細
  • 源泉徴収票
  • 確定申告書の控え
  • 課税証明書
  • 不動産登記簿謄本
  • 車検証
  • 自動車の査定書
  • 退職金見込額を証明する書類
  • 保険証券の写し
  • 保険の解約返戻金に関する書類
  • 遺産分割協議書
  • 財産の処分に関する契約書など

特に、金融機関の預貯金の通帳や取引履歴には様々な入出金、引き落し等の履歴がありますから、裁判所や管財人によって細かくチェックされます。そのため、何のために引き出したのか、何の支払いのための引き落としなのかといったことを、詳細に説明する必要があります。

その中で、説明ができない取引や、不自然な説明があれば、裁判所や破産管財人から、怪しいお金の流れなのではないかと疑いをもたれてしまいます。

また、加入している保険はないと申告しておきながら保険料の引き落としと思われる履歴があったり、自動車は所有していないと申告しておきながら自動車税や駐車場代の引き落としなどがあったりすれば、裁判所や破産管財人は「虚偽の申告をしているのではないか?」と思うでしょう。

「それなら、通帳を全て提出しないで口座の存在自体を隠してしまえばバレないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、そうとも言えません。本来なら提出した口座にあるであろう入出金の履歴がなければ、別口座の存在が疑われます。

たとえば、給与の振込み、公共料金の引き落とし、家賃の引き落とし、クレジットカードの引き落としなどが提出した口座の通帳に見当たらなければ、裁判所や破産管財人は「他にも口座があるのではないか」と考えるのが通常です。

また、本人名義の別口座への送金履歴があるのに、それに対応する入金履歴のある口座の通帳が提出されていないことから、口座を隠していることが発覚するケースもあります。

(2) 破産者に対する事情聴取などから発覚

裁判所や破産管財人は、破産者の資産を調査するにあたって破産者から事情聴取をすることがありますが、裁判所や破産管財人からの質問に対し、破産者が説明を拒否したり、不合理な説明しかできなかったりすれば、「財産を隠しているのではないか?」という疑いをもたれます。

このように破産者に対する事情聴取などから財産隠しが発覚することもあります。

(3) 郵便物から発覚

管財事件となり破産管財人が選任された場合には、破産の手続期間中、破産者宛の郵便物が破産管財人に転送されることになります。

そして、破産管財人は郵便物を開封して中身を確認します。これは、債権者の漏れや申告していない資産がないかなどをチェックするためです。

このように、破産管財人による郵便物のチェックにより財産隠しが発覚することもあります。

3.財産隠しをしたらどうなる?

では、自己破産の手続で財産隠しが発覚したらどうなるのでしょうか。具体的にどのような責任を問われ、不利益を受けることになるのかにつき、みていきましょう。

(1) 民事上の責任

財産隠しは「債権者を害する目的での破産財団に属し又は属すべき財産の隠匿」にあたり、免責不許可事由となります(破産法252条1項1号)。ですから、財産隠しが発覚すれば、免責が受けられなくなる可能性が高くなります。実際、過去には財産隠しをして免責が不許可となった事例があります。

免責を受けられなくなってしまえば、はっきりいって自己破産をした意味がありません。

また、自己破産直前に財産の名義変更をした場合には、破産管財人による否認権行使の対象となります。

否認権を行使されれば、その行為が取り消されてしまいますから、結局財産隠しをした意味はなくなってしまいます。

さらに、もし財産隠しが発覚しないまま免責許可決定が出されたとしても、その後に次の(2)で説明する詐欺破産罪で有罪の判決が確定した場合には、債権者の申立てまたは裁判所の職権で、免責が取り消されてしまう可能性があります。

(2) 刑事上の責任

また、財産隠しをすると、民事上の責任だけでなく、刑事上の責任に問われる可能性もあります。

破産法では、「詐欺破産罪」という犯罪が定められているのですが、財産隠しをするとこの「詐欺破産罪」が成立し、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、またはその両方に処せられる可能性があります(破産法265条1項1号)。

4.自己破産は弁護士に相談を

今回は、自己破産で財産隠しをしたらどうなるのかについて解説しました。

生活再建のために少しでも多くの資産を手元に残しておきたいという気持ちも分からなくはありませんが、財産隠しをすることによるリスクは極めて大きく、全てを台無しにしてしまうことになりますから、絶対にしないようにしましょう。

もし財産があるということで自己破産をすべきかどうかお悩みでしたら、一度弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所では、債務整理に関するご相談は何度でも無料でお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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