交通事故に遭ったらすぐ病院へ行くべき理由
「交通事故に巻き込まれてしまったが、軽く当たっただけで身体に痛みもないし、病院は行かないで良いか」と思われる方は、意外と多いです。
ですが、交通事故に遭ったら、どうかすぐに病院に行って診察と検査を受けてください。
そのまま放置をすると、数日後に痛みが出てくる可能性がありますし、下手をすればケガや後遺症の賠償金を要求できないおそれすらあります。
ここでは、交通事故に遭ったら、なぜすぐ病院へ行かなければならないのか、通院の際には何に注意すべきかを解説します。
このコラムの目次
1.事故後にすぐ病院に行くべき理由
(1) 交通事故が原因のケガと認めてもらえない可能性
交通事故から「1週間以内」に通院しなければ、交通事故が原因でケガや後遺障害が生じたと認められなくなるおそれがあります。
そうなると、一切、一円も、加害者や加害者側の保険会社から賠償金をもらえません。
損害賠償を請求するには、加害者の行為により、被害者の方に損害が生じたという、原因結果の関係、つまり、「因果関係」が絶対に必要です。
これは、交通事故の賠償請求でも同じことです。
交通事故から時間が経って病院に行ったとしても、1週間以上時間が空いてしまうと、因果関係が認められないリスクが非常に高くなります。
交通事故から時間が経てばたつほど、道路で転んだ、階段から落ちた、無理な体勢をとってしまったなど、交通事故以外の原因が紛れ込む可能性が高くなります。
医師が交通事故とケガの因果関係を認める判断をしたとしても、交通事故から何週間も経過してからのものであれば、交通事故以外の原因があったことを排除しきることができなくなります。
よって、事故後はできるだけ早く、病院で診断を受けるべきなのです。
(2) ケガの証拠のために検査を受けるべき
事故からすぐの検査結果は、ケガの有無や程度の客観的な証拠として、とても大切です。
特に、CTやMRIなどの画像検査は、「他覚的所見」と呼ばれ、むちうちの慰謝料を交渉する際の重要な要素になり、また、後遺症の賠償金を手に入れるための大きな武器になります。
後遺症の賠償金を手に入れるには、後遺障害等級認定を受けることが条件です。検査結果は認定を受けるための重要な証拠になります。
また、医学的な専門的検査を受けることで、気づいていなかった症状が分かることがあります。
「事故で体を強く打ち付け、または揺さぶられた割には、体のどこにも支障がない」……そう感じていても、実はケガをしていることがよくあるのが交通事故の怖いところです。
何日もたってから、ひどいときには一か月も経ってから、本格的な症状が出てくることもあります。
そんなに日にちが空いてしまっては、因果関係が認められることはとても難しくなります。
ですから、たとえ痛みやしびれなどの症状を感じていなくても、できる限り早くに検査を受けるべきです。
精密な検査を受ければ、自覚していなかった症状を見つけることができ、すぐに診断を受けたうえで治療を始められます。
そうすれば、完治する可能性も上がりますし、後遺症も少なくて済みます。因果関係についても問題が生じにくくなるでしょう。
(3) 通院が遅いとケガの慰謝料が減るおそれがある
交通事故に遭っても、必ず慰謝料がもらえるというわけではありません。
後遺症の慰謝料は、後遺障害等級の認定を受けなければもらえません。
さらに、ケガについての慰謝料も、「通院」をしなければもらえないのです。
交通事故では、公平にできる限り早く賠償金を支払えるようにするため、慰謝料などの金額には一定の相場が作られています。
そして、交通事故のケガの慰謝料などの相場では、通院期間や実際に通院した日数が計算方法に組み込まれています
たとえば、自賠責保険から支払われるケガの慰謝料は、2022年1月現在、4,300円に「事故日から最終治療日までの日数」と「実際に通院や入院をした日数の2倍」のいずれか少ない方を掛けて計算されます。
最終治療日までよほど時間がかかった場合などはともかく、たいていは、実際に通院した日数の2倍が基準になりますから、通院が遅くなると、その分通院日数が少なくなり、慰謝料が減ってしまうおそれがあります。
2.通院時の注意点
(1) 通院するべき病院はしっかり選ぶ
すぐ通院しろと言われても、交通事故に遭った場合どのような病院に通院をすればよいのでしょうか。
理想的な通院先は総合病院です。
交通事故では症状が自覚できないことが多いですから、さまざまな診療科で、診療や検査を受け、気づいていなかったケガを見つけてもらい、検査で証拠を残すことができます。
そして、総合病院に通院するにせよ、開業医に行くにせよ、「整形外科」には必ずかかってください。
交通事故によるケガの中でも特に多いうえに、外部からは見つけにくく、自覚症状が後から出てくるなどやっかいな性質を持つむちうちは、整形外科で検査や診療を受けられます。
なお、整骨院は病院ではないので、その診断は賠償手続の証拠になりません。必要な検査をしてもらえませんし、診断書も書いてもらえません。
少なくとも初診は、整骨院は避けるようにしましょう。
なお、複数のケガがある場合には、それぞれの専門病院に同時並行で通院することもできます。
慣れているということで、かかりつけの病院に行く方も多いのですが、かかりつけの病院があなたの症状に対応しているとは限りません。
とはいえ、すぐに診断を受ける必要がありますから、時間や余裕がない場合はかかりつけの病院でも仕方がないこともあります。
しかし、そのあとは、紹介状をもらって総合病院に行きましょう。
また、夜間に救急外来を開いている病院でも構いませんが、この場合も総合病院への紹介状は書いてもらいましょう。
(3) 転院や整骨院などへの通院
転院や整骨院などへの通院は、以下のような注意をしなければ、損害賠償請求に問題が生じるおそれがあります。
転院するときには必ず保険会社に事前に連絡をすること
転院をすること自体は、常識的に考えてまっとうな理由(通院のしやすさや医師との相性など)があれば、損害賠償手続に問題を与えません。
ただし、転院の前には、必ず、加害者側の任意保険会社に連絡をしなければいけません。
加害者側の任意保険会社は、自賠責保険会社の分まで被害者にまとめて賠償金を支払う「一括払い」というサービスをすることが一般的です。一括払いにより、任意保険会社から病院に、直接医療費が支払われます。
任意保険会社は、一括払いの前に、被害者の方から同意書を取り付け、通院先の病院を把握しています。
勝手に転院すれば、通院先が把握できなくなってしまいますから、保険会社は困ってしまいます。最悪の場合、一括払いを打ち切ることもあるでしょう。
整骨院は医師の明確な指示の下で通うこと
繰り返しますが、整骨院は「病院」ではありません。
ですから、整骨院への通院について、慰謝料などの賠償金を要求するには、整形外科の医師から書類などに記載された同意や指導を受けていることが必要です。
(3) 初診のときの注意点
通院時期は、2,3日以内が目安です。1週間は、原則として、賠償金がもらえる限界と思ってください。
保険会社や警察との連絡もあるでしょうから当日にとはなかなかいかないでしょうが、それらを終えたらすぐ通院しましょう。
医師には、事故の状況・痛みやしびれの症状・症状のある体の部分などをできる限り具体的に、正確に伝えてください。
カルテや診断書にしっかりと記載してもらい、できればその内容を確認させてもらいましょう。
どのようなスピードで、どのようにぶつかったのか、すなわち、「どのような衝撃を受けたのか」も説明します。
そして、その衝撃のせいで、体のどこの筋肉や筋が痛んだのかを具体的に医師に説明しましょう。
あくまで医師が最終的な診断を下すとはいえ、被害者の方が交通事故に遭ったのです。
診察のときの体の状況自覚症状はもちろん、なにより、交通事故の内容は、被害者の方にしかわかりません。
被害者の方の説明が正確で具体的であるほど、医師はより適切な判断を下せるようになります。
3.交通事故に遭ったらすぐ病院へ!
ケガの医療費、後遺症の損害賠償金、その他あらゆる損害賠償請求をするには、交通事故とケガや後遺症の間の因果関係が認められることが不可欠です。
ケガや後遺症が、本当に交通事故が原因で起きたと証明するには、事故から時間を空けずに病院に行って診断や検査を受けるしかありません。
もっとも、医師は法律の専門家ではありません。交通事故の損害賠償で重要視される検査と医師が重視する検査にはずれが生じることもあります。
賠償手続や後遺障害等級認定手続のポイントに応じた判断を示してくれるとは限りません。
そこで、できれば事故当初から弁護士に相談しましょう。
弁護士は法律の専門家です。依頼者の方にはもちろん、依頼者の方を通して、場合によっては手紙などにより、医師に対しても、法律の専門的知識に基づく助言をすることができます。
泉総合法律事務所では、これまで多数の交通事故の被害者の皆様をお手伝いしてまいりました。交通事故でケガを負ってしまった被害者の皆様のご相談をお待ちしております。
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